非営利団体の「情報共有」ガイド
業務連絡は個人のLINEで、書類は紙の回覧で、ファイルはメール添付で——多くの団体で情報が経路ごとに散らばっています。無料・割引の非営利プランを使って、「ここを見れば分かる」を作る方法と移行の手順を解説します。
最終更新: 2026年7月7日
現場で起きていること
業務連絡が個人のLINEに流れていく
「手軽だから」で始まった個人LINEのグループが、いつの間にか団体の公式連絡網になっている。シフトの調整も、行事の連絡も、ときには利用者に関わる話も、同じ画面に混ざって流れていきます。
電話・FAX・紙の回覧で情報が止まる
非常勤の職員や夜勤明けの職員に情報が届くまでタイムラグがあり、「聞いていない」「その紙どこにいった?」が日常的に起きます。伝える側も、同じ内容を何度も繰り返すことになります。
ファイルの「最新版」が分からない
メール添付で往復するうちに「最終版_修正2(これが最新).xlsx」が量産される。ファイルはUSBメモリや個人のパソコンに散らばり、探す時間だけが積み上がっていきます。
辞めた人と一緒に情報が消える
業務の手順や過去の経緯が、特定の人の頭の中にしかない。退職や異動のたびに、残った人が同じことをゼロから調べ直す——「属人化」は情報共有の仕組みがないことの結果です。
解決の3つの道具
情報の性質は「流れる連絡」「共同で触るファイル」「あとから探す記録」の3つに分かれます。それぞれに合った置き場所を用意するのが、情報共有を仕組みにする基本です。どれも非営利プランで無料または半額以下で揃います。
①話題ごとのチャット(Slack / Teams)
連絡を「人に送る」から「話題の場所に書く」に変える道具です。「シフト連絡」「行事準備」のようにチャンネル(部屋)を分ければ、宛先を考える必要がなくなり、あとから入った職員も過去のやり取りを追えます。Slackは従業員250人以下の非営利団体ならProプラン(通常¥925/席/月・年払い)が無料。Microsoft 365の無償枠にはチャットのTeamsが含まれています。
向いているケース: 個人LINEの業務利用をやめたい団体。まずここから始めるのが定番です。
②ファイルの置き場所を1つに(Googleドライブ / OneDrive・SharePoint)
メール添付をやめ、共有の置き場所にファイルを置いて「場所を知らせる」運用に変えると、最新版問題は仕組みごと消えます。同じファイルを複数人で同時に編集することもできます。Microsoft 365非営利プランはWeb版Officeを含むBusiness Basicが300席まで無料、Google Workspace for Nonprofitsは無償版でも組織全体で100TBの保存容量があります。
向いているケース: 「最新版どれ?」「あのファイルどこ?」が頻発している団体。
③記録・マニュアルの基地(Notionなど)
議事録・マニュアル・引き継ぎ資料のような「あとから探して読む」情報は、チャットに流すのではなく1か所に積み上げます。Notionは非営利団体ならPlusプラン(通常¥1,650/席/月)が50%OFF(最大3ワークスペース)。Microsoft 365ならSharePoint、Google Workspaceなら共有ドライブとドキュメントの組み合わせでも代用できます。
向いているケース: 引き継ぎのたびに苦労している団体、マニュアルを整備したい団体。
複数の施設・拠点への一斉のお知らせが主目的なら、社内SNSのWorkvivo(非営利は全プラン50%OFF)という選択肢もあります。
目安として
すでにMicrosoft 365非営利プラン(無償のBusiness Basic)があるなら、チャット(Teams)もファイル共有(OneDrive/SharePoint)も追加費用ゼロで揃います。スイートをまだ使っていない団体や、外部協力者とのやり取りが多い団体は、Slack Pro無料から始めるのが手軽です。
個人LINEの何が問題か
「今のLINEグループで回っているのに、わざわざ変える必要があるのか?」——現場からよく出る声です。手軽さは本物ですが、個人アカウントの集まりを団体の連絡基盤にすることには、構造的な問題があります。
利用者の情報が個人の端末に残る
業務の会話に利用者の名前や状態が混ざると、その情報は職員個人のスマホに残ります。退職した後も残り続け、端末を紛失しても団体としては守りようがありません。
記録が団体に残らない
何かあったときに経緯を確認しようにも、会話は個人アカウントの中にあります。団体として過去のやり取りを検証できず、担当者が代われば履歴ごと失われます。
入っていない人には届かない
新しく入った職員、LINEを使わない職員には別ルートで伝えることになり、結局「LINEと口頭と紙」の多重運用に戻ります。連絡網が私的なグループだと、誰が入っていて誰が入っていないかの管理もできません。
職員の公私の境目が消える
休みの日も業務の通知が私物のスマホに届き続ける状態は、職員の負担としても小さくありません。業務用の場所を分けることは、職員を守ることでもあります。
大事なのは順番
個人LINEの業務利用を「禁止」するだけでは、連絡手段を失った現場が結局元に戻ります。先に代わりの場所を用意して、業務連絡をそちらへ——の順番で進めるのが現実的です。業務用のチャットサービスへ移す道は他にもありますが、当サイトでは非営利プログラムで無料・割引になるツールを軸に紹介しています。
はじめの一歩
いまの連絡経路を棚卸しする
「誰から誰へ」「何の連絡が」「どの手段で」流れているかを書き出します。個人LINEに流れている業務連絡、紙でしか残っていない情報、特定の人しか知らない手順に印をつけると、移すべきものが見えてきます。
30分で構いません。この棚卸し自体が、情報共有の問題の大きさを把握するいちばんの近道です。
無料で使える枠から道具を選ぶ
すでにMicrosoft 365非営利プランがあればTeamsとOneDrive/SharePointで、チャットもファイル共有も追加費用ゼロで揃います。スイートをまだ使っていない、あるいは外部の協力者・ボランティアとのやり取りが多いなら、Slack Pro無料(250人以下)が始めやすい入口です。
申請手順はSlack申請ガイドとMicrosoft 365ガイドにまとめています。
「1つの連絡」だけ引っ越す
すべてを一気に移そうとせず、「シフト連絡だけ」「行事の準備だけ」と1つ選んで新しい場所に移します。「あの件はここを見れば載っている」という小さな成功体験が、次の引っ越しをずっと楽にします。
移した連絡を元のLINEにも流す二重運用はしないのがコツです。個人LINEの業務利用をやめるルール化は、代わりの場所が回り始めてからで十分です。
このガイドは2026年7月時点のSlack・Microsoft・Google・Notion・Workvivoの公式情報にもとづいています。各プログラムの内容は変更されることがあるため、申請前に公式ページで最新の条件をご確認ください。
関連ガイド
道具が決まったら、それぞれの申請ガイドへ。SlackはTechSoup、Microsoft 365はGoodstackの団体認証を使います。