コンテンツへスキップ
    トップに戻る

    非営利団体の「情報共有」ガイド

    業務連絡は個人のLINEで、書類は紙の回覧で、ファイルはメール添付で——多くの団体で情報が経路ごとに散らばっています。無料・割引の非営利プランを使って、「ここを見れば分かる」を作る方法と移行の手順を解説します。

    最終更新: 2026年8月1日

    現場で起きていること

    業務連絡が個人のLINEに流れていく

    「手軽だから」で始まった個人LINEのグループが、いつの間にか団体の公式連絡網になっている。シフトの調整も、行事の連絡も、ときには利用者に関わる話も、同じ画面に混ざって流れていきます。

    電話・FAX・紙の回覧で情報が止まる

    非常勤の職員や夜勤明けの職員に情報が届くまでタイムラグがあり、「聞いていない」「その紙どこにいった?」が日常的に起きます。伝える側も、同じ内容を何度も繰り返すことになります。

    ファイルの「最新版」が分からない

    メール添付で往復するうちに「最終版_修正2(これが最新).xlsx」が量産される。ファイルはUSBメモリや個人のパソコンに散らばり、探す時間だけが積み上がっていきます。

    辞めた人と一緒に情報が消える

    業務の手順や過去の経緯が、特定の人の頭の中にしかない。退職や異動のたびに、残った人が同じことをゼロから調べ直す——「属人化」は情報共有の仕組みがないことの結果です。

    解決の3つの道具

    情報の性質は「流れる連絡」「共同で触るファイル」「あとから探す記録」の3つに分かれます。それぞれに合った置き場所を用意するのが、情報共有を仕組みにする基本です。どれも非営利プランで無料または半額以下で揃います。

    話題ごとのチャット(Slack / Teams)

    連絡を「人に送る」から「話題の場所に書く」に変える道具です。「シフト連絡」「行事準備」のようにチャンネル(部屋)を分ければ、宛先を考える必要がなくなり、あとから入った職員も過去のやり取りを追えます。Slackはワークスペースのメンバーが250人以下ならProプラン(通常¥925/席/月・年払い)が無料(団体全体の従業員数ではなく、ワークスペースの人数で判定されます)。Microsoft 365の無償枠にはチャットのTeamsが含まれています。

    向いているケース: 個人LINEの業務利用をやめたい団体。まずここから始めるのが定番です。

    ファイルの置き場所を1つに(Googleドライブ / OneDrive・SharePoint)

    メール添付をやめ、共有の置き場所にファイルを置いて「場所を知らせる」運用に変えると、最新版問題は仕組みごと解消に近づきます(ダウンロードして個人のPCに複製したファイルをまた添付で回してしまうと、同じ混乱は再発しうるので運用の徹底も必要です)。同じファイルを複数人で同時に編集することもできます。Microsoft 365非営利プランはWeb版Officeを含むBusiness Basicが300席まで無料、Google Workspace for Nonprofitsは無償版でも組織全体で100TBの保存容量があります。

    向いているケース: 「最新版どれ?」「あのファイルどこ?」が頻発している団体。

    記録・マニュアルの基地(Notionなど)

    議事録・マニュアル・引き継ぎ資料のような「あとから探して読む」情報は、チャットに流すのではなく1か所に積み上げます。Notionは非営利団体ならPlusプラン(通常¥1,650/席/月)が50%OFF(最大3ワークスペース。ワークスペースは団体ごとの作業スペースの単位)。Microsoft 365ならファイル・情報共有の置き場であるSharePoint、Google Workspaceなら共有ドライブとドキュメントの組み合わせでも代用できます。

    向いているケース: 引き継ぎのたびに苦労している団体、マニュアルを整備したい団体。

    複数の施設・拠点への一斉のお知らせが主目的なら、社内SNSのWorkvivo(非営利は全プラン50%OFF)という選択肢もあります。

    目安として

    すでにMicrosoft 365非営利プラン(無償のBusiness Basic)があるなら、チャット(Teams)もファイル共有(OneDrive/SharePoint)も追加費用ゼロで揃います。スイートをまだ使っていない団体は、Slack Pro無料から始めるのが手軽です。ただし外部協力者との団体間連携(Slack Connect)は相手側にも有料プランが必要になるのが原則で、外部の協力者は自団体のワークスペースへゲスト招待する形が現実的です。

    個人LINEの何が問題か

    「今のLINEグループで回っているのに、わざわざ変える必要があるのか?」——現場からよく出る声です。手軽さは本物ですが、個人アカウントの集まりを団体の連絡基盤にすることには、構造的な問題があります。

    利用者の情報が個人の端末に残る

    業務の会話に利用者の名前や状態が混ざると、その情報は職員個人のスマホに残ります。退職した後も残り続け、端末を紛失しても団体としては守りようがありません。なお、これはLINE固有の問題ではなく、SlackやTeamsのような業務用ツールでも私物のスマホにアプリを入れて使えば同じ課題は残ります。利用者情報の投稿ルールと、私物端末での利用の扱いを団体として決めておくことが大切です。

    記録が団体に残らない

    何かあったときに経緯を確認しようにも、会話は個人アカウントの中にあります。団体として過去のやり取りを検証できず、担当者が代われば履歴ごと失われます。

    入っていない人には届かない

    新しく入った職員、LINEを使わない職員には別ルートで伝えることになり、結局「LINEと口頭と紙」の多重運用に戻ります。連絡網が私的なグループだと、誰が入っていて誰が入っていないかの管理もできません。

    職員の公私の境目が消える

    休みの日も業務の通知が私物のスマホに届き続ける状態は、職員の負担としても小さくありません。業務用の場所を分けることは、職員を守ることでもあります。

    大事なのは順番

    個人LINEの業務利用を「禁止」するだけでは、連絡手段を失った現場が結局元に戻ります。先に代わりの場所を用意して、業務連絡をそちらへ——の順番で進めるのが現実的です。業務用のチャットサービスへ移す道は他にもありますが、当サイトでは非営利プログラムで無料・割引になるツールを軸に紹介しています。

    コラム: 「ビジネス版LINE」が別に売られている、という事実

    個人LINEからの卒業を勧めると、「LINEはダメなツールなのか」と受け取られることがあります。そうではありません。実は、個人向けのLINEとは別に、「Business版LINE」を掲げる業務用チャット「LINE WORKS」(LINE WORKS株式会社)が1つの商品として提供されています。個人の連絡先と業務の連絡は同じアプリに混ぜない——この記事の主張と同じ考え方が、LINEに親しんだ利用者向けの製品ラインナップにも表れているわけです。

    LINE WORKSにはフリープラン(無料・30ユーザーまで・ストレージ5GB)に加えて、非営利団体向けの特別プラン(フリープランの機能のまま最大1,000ユーザー・ストレージ50GBが無料、2026年7月時点)があります。ただし対象はNPO法人・任意団体に限られ、社会福祉法人・医療法人・学校法人などは対象外と公式に明記されています(詳しくはトピック記事で解説)。「LINEに近い操作感なら現場が受け入れやすい」という対象団体にとっては、業務用の場所を分けるための選択肢の1つになります。

    大事なのはアプリの銘柄ではありません

    個人アカウントの集まりと、団体が管理する業務用の場所を分けること。それがこのページの本題で、SlackでもTeamsでもLINE WORKSでも、その一線は同じです。

    「入れたのに使われない」を避ける

    kintoneを入れたが誰も入力しない。Slackを導入したが「LINEの方が早い」と使われない。Google Workspaceを入れたがGmailしか使われていない——非営利・福祉の現場でよく起きます。多くの場合、ツールの機能不足ではなく導入の順序の問題です。次の3つが重なると定着しません。

    業務が書き出されていないまま、ツールだけ入れる

    誰が・何を・どの順番でやっているかが文章になっていない状態で「箱」だけ用意しても、何をどう書けばいいのかは現場に伝わりません。とくに欠員対応・シフトの差し替え・例外の承認といった「通常どおりでない日」の動きは、ベテラン数名の頭の中にしかないことが多く、そこを書き出さないまま作った置き場所は使われません。

    「書いてもらう」段階を軽く見る

    設定して案内メールを1通送れば使われ始める——という前提が、そもそも甘いところです。ここでつまずいたまま諦めると、アカウントだけが残ります。効くのは、書かないと次の仕事に進まない形にすること(申請や報告の入口をそこに寄せる)と、事務局長・管理者自身が率先して書く姿を見せることです。

    定着しないうちに次のツールを足す

    1つが回り出す前にもう1つ重ねると、情報の置き場所そのものが分散し、「どこに何を書けばいいか分からない」状態を招きます。ツールを増やした数だけ便利になるはずが、逆に手が止まります。3つの道具を一度に導入せず、1つ定着させてから次へ。

    マニュアルは、ツールを選んだあとに作る

    順番は「業務を書き出す → 合う道具を1つ選ぶ → マニュアルを作る」です。先にマニュアルを作っても、汎用的な手順書は通常時しか想定していないため、例外対応の多い現場では読まれずに終わります。また、現場がいま持っている操作感からツールが離れているほど定着しにくくなります(「スレッド」のような概念が前提になっているツールは、そこから説明が必要です)。次の「はじめの一歩」はこの順番どおりに並べています。

    はじめの一歩

    01

    いまの連絡経路を棚卸しする

    「誰から誰へ」「何の連絡が」「どの手段で」流れているかを書き出します。個人LINEに流れている業務連絡、紙でしか残っていない情報、特定の人しか知らない手順に印をつけると、移すべきものが見えてきます。

    30分で構いません。この棚卸し自体が、情報共有の問題の大きさを把握するいちばんの近道です。
    02

    無料で使える枠から道具を選ぶ

    すでにMicrosoft 365非営利プランがあればTeamsとOneDrive/SharePointで、チャットもファイル共有も追加費用ゼロで揃います。スイートをまだ使っていない団体には、Slack Pro無料(250人以下)が始めやすい入口です。なお外部の協力者・ボランティアとのやり取りが多い場合、団体間でチャンネルを共有する「Slack Connect」は原則、相手側の組織も有料プランに入っていることが条件になるため、無償の連携手段としては使えないことが多いです(参照: Slack公式ヘルプ)。外部の協力者には、自団体のワークスペースにゲストとして個別に招待する形が現実的です。

    申請手順はSlack申請ガイドMicrosoft 365ガイドにまとめています。
    03

    「1つの連絡」だけ引っ越す

    すべてを一気に移そうとせず、「シフト連絡だけ」「行事の準備だけ」と1つ選んで新しい場所に移します。「あの件はここを見れば載っている」という小さな成功体験が、次の引っ越しをずっと楽にします。

    恒久的に元のLINEと新しい場所の両方に同じ連絡を流し続ける二重運用は、いずれ形骸化するので避けたいところです。ただし切替の当初は、非常勤職員や夜勤職員など新しい場所を見落としやすい人への伝達漏れを防ぐため、一定の周知期間を設けて両方に流す運用が現実的です。個人LINEの業務利用をやめるルール化は、代わりの場所が回り始めてからで十分です。

    このガイドは2026年7月時点のSlack・Microsoft・Google・Notion・Workvivo・LINE WORKSの公式情報にもとづいています。各プログラムの内容は変更されることがあるため、申請前に公式ページで最新の条件をご確認ください。

    関連ガイド

    道具が決まったら、それぞれの申請ガイドへ。SlackはTechSoup、Microsoft 365はGoodstackの団体認証を使います。