非営利団体のAI導入ガイド
ChatGPTもClaudeも、非営利団体なら$8/席から使えます(ChatGPT Businessは年払いの場合。月払いは$10/席)。MicrosoftやGoogleのAIは、いま使っているプランに含まれているかもしれません。現場での使いどころ、プランの選び方、そして個人情報を守る運用ルールまでを解説します。
最終更新: 2026年7月18日
現場でできること
総務省の令和7年版情報通信白書によると、生成AIを「使ったことがある」と答えた人は日本では26.7%(2024年度、20〜60歳代対象のアンケート調査)——前年の9.1%から1年で3倍に増えました。それでも同じ調査での米国68.8%・中国81.2%・ドイツ59.2%と比べれば、まだ大きな差があります。これは個人の利用率に関する調査であり、非営利団体の実務での効果を直接示すものではありませんが、日本全体としてはまだ導入初期の段階といえます。
生成AIは「なんでもできる魔法」ではありませんが、人手の足りない非営利団体の事務仕事とは相性のよい道具です。よく効く使い方は、おおむねこの4つに集約されます。
お便り・案内文・申請書の下書き
利用者や家族向けのお便り、行事の案内、助成金申請書の構成案。ゼロから書かせるのではなく「たたき台を作ってもらい、人が仕上げる」使い方が、いちばん実務に効きます。
長い文書の要約・読み解き
制度改正の通知、行政からの事務連絡、長い会議録。「要点を3つに」「前回からの変更点だけ」といった読み方を任せられます。原文を手元に置いて、大事な箇所は人が確認するのが前提です。
言い換え・翻訳
専門用語をやさしい日本語に直す、外国籍の利用者・家族向けに多言語の案内文を作る、堅すぎる文章を柔らかくする——「伝わる表現への言い換え」は生成AIの得意分野です。
表計算やITの相談相手
「Excelでこういう集計をしたい」「この関数は何をしている?」「このエラーの意味は?」といった質問に答えてくれます。専任の情報システム担当がいない団体にとって、いつでも聞ける相談相手になります。
非営利プランの比較
主要な生成AIには、いずれも非営利団体向けの割引や無償機能があります。専用AIを安く契約する(①②)か、手元のスイートに含まれるAIを使う(③④)かが選択の軸です。
①ChatGPT Business(OpenAI)
通常$20/席前後のBusinessプランが、非営利団体は年払い$8/席/月(月払い$10)になります(2席から)。申請はGoodstack経由の短いフォームで、承認後は請求時に割引が自動適用されます。個人向けのPlusプランと、プログラムからAIを直接呼び出す開発者向けのAPI利用は対象外です。
向いているケース: チーム全員で同じAIを使いたい団体。利用者がいちばん多く、日本語の情報も豊富です。
②Claude Team(Anthropic)
通常$30/席/月のTeamプランが、非営利団体は$8/席/月になります(2席から)。認証はGoodstack(Percent)経由。期限付きのトライアルではなく、非営利資格を維持している限り継続できると公式に案内されています。個人向けのProプランとAPI利用は対象外です。
向いているケース: 長い資料の読み込みや文章の丁寧な推敲を重視する団体。ヘビーユーザーがいる団体は下のプレミアムシートも検討を。
Claude Teamには通常シートの5倍まで使える「プレミアムシート」もあります(公式に明記)。非営利価格は公式ページには記載がありませんが、運営メンバーが実際の契約画面で$40/席/月であることを確認しています(2026年7月時点)。通常シートとの混在購入は可能と公式に案内されており、運営メンバーの場合は「プレミアム1席($40)+通常1席($8)=$48/月」という最小2席の構成も組めました。シート構成の変更は契約途中でも管理画面から可能で、次の請求日から反映されました(いずれも運営メンバーの実測、2026年7月時点)。小さな団体なら、いちばんAIを使い込む人(理念駆動型の社会福祉組織の場合、多くは代表や中核メンバー)にプレミアムシートを割り当てる構成が費用対効果の面で有力です。なお、ChatGPT Businessの非営利割引には、こうした上位シートの案内は見当たりません。
③Microsoft 365のAI(Copilot)
無償のBusiness Basic(非営利300席まで無料)にも、追加費用なしで使えるAIチャット(Copilot Chat)が含まれています。WordやExcelの中で動くフル機能のMicrosoft 365 Copilotは非営利15%割引の案内がありますが、米ドル建ての案内で、日本での価格・購入可否は確認できていません。
向いているケース: すでにMicrosoft 365非営利プランを使っている団体。まず無料のAIチャットから。
④Google WorkspaceのAI(Gemini)
公式の比較表では、無償のGoogle Workspace for NonprofitsでもGeminiのAI機能が使えるとされています。割引版のBusiness Standard(75%以上OFF)では、Gmailやドキュメントなどアプリ内のGemini機能も含まれます。
向いているケース: Google Workspaceを使っている団体。手元のプランでどこまで使えるか確認から。
目安として
追加費用ゼロで始めるなら、手元のMicrosoft 365 / Google Workspaceに含まれるAI機能から。チームで本格的に使う専用AIは、ChatGPT BusinessかClaude Teamの非営利価格$8/席(通常の1/3前後)が有力です。どちらも2席からで、認証は共通のGoodstackを使います。
コラム: ライバル同士なのに、なぜ2社とも「$8」なのか
ChatGPT Business(年払い)もClaude Teamも、非営利価格は同じ$8/席/月。しかも団体の審査をするのは、どちらも同じ会社——Goodstackです。生成AIをめぐって激しく競い合う2社が、非営利向けでは価格も審査窓口もそろっている。偶然にしてはできすぎです。
種明かしをすると、GoodstackはOpenAIやAnthropicの子会社ではなく、「団体が本物の非営利かどうか」の確認だけを専門に請け負う独立企業です。2024年10月までは「Percent」という名前で(法人名はいまも We Are Percent Limited)、公式サイトでは約1,350万件の団体データベースと240以上の国と地域への対応をうたい、GoogleやCanvaの非営利プログラムの審査も担っています。各社が自前で世界中の非営利制度を調べる代わりに、審査だけを共通のインフラに任せる——だから競合同士でも入口が同じになるのです。
利用する側から見ると、この相乗りには実利があります。Goodstackが行う「団体が本物の非営利かどうか」の認証情報は、一度通れば両社への申請で使い回せます。ただし、これは団体認証の再利用であって、ChatGPT・Claudeそれぞれへの申請や契約手続き自体は別途必要です。それでも認証をやり直す手間がない分、「どちらか1つに賭ける」のではなく、各社の最低契約人数分(それぞれ2席・月$16程度、両方で月$32程度)の費用で両方を試し、現場に合うほうを選ぶという比べ方がしやすくなります。
出典メモ
価格と認証パートナーはOpenAI公式ヘルプとClaude for Nonprofits、PercentからのリブランドはGoodstack公式ブログ(2024年10月)で確認できます(2026年7月時点)。Goodstackの登録手順はGoodstack登録ガイドへ。
安全に使うために
AIそのものよりも、「何を入力するか」がリスクの中心です。福祉や支援の現場は、病歴・障害・生活状況といった特に配慮が必要な個人情報を日常的に扱っているからです。押さえるべきポイントは4つあります。
ビジネス向けプランは「学習に使わない」が標準
ここで紹介した4サービスのビジネス・団体向けプランは、いずれも「顧客の入力内容を既定ではAIモデルの学習に使わない」ことを公式資料に明記しています(OpenAI・Anthropic・Microsoft・Googleの公式ページ、2026年7月時点)。団体の業務で使うなら、この前提があるビジネス向けプランが基本です。
個人アカウントでの「野良AI利用」が一番のリスク
一方、個人向けの無料プランでは、設定によっては入力内容がモデルの学習に使われる場合があります。職員が私物の無料アカウントに業務情報を貼り付ける——これがもっとも起きやすい事故の一つです。禁止を呼びかけるだけでなく、団体としてビジネス向けアカウントを配るほうが安全です。
利用者の個人情報は入力しない
学習に使われないとしても、外部のサービスに情報を渡すことに変わりはありません。氏名や住所はもちろん、病歴・障害・生活状況といった要配慮個人情報は入力しない、必要な場合は本人を特定できない形に置き換えてから使う——これを団体のルールにしましょう。
AIの答えは人が確認してから使う
生成AIは、もっともらしい間違い(ハルシネーション)をすることがあります。制度・法令・金額など事実確認が必要な内容や、対外的に出す文書は、必ず人が最終確認する前提で使います。「下書きはAI、責任は人」が原則です。
はじめの一歩
個人情報を含まない業務で試す
お便りの下書きや公開資料の要約など、個人情報を含まない業務を1つ選び、まず管理者や有志の少人数で試します。ここで「どの業務に効くか」の感触をつかんでから広げるのが安全です。
プランを選んで申請する
チームで本格的に使うと決めたら、ChatGPT BusinessまたはClaude Teamの非営利価格($8/席)を申請します。どちらも団体の認証はGoodstack経由なので、Goodstackの登録が済んでいればすぐに進めます。
利用ルールを1枚にまとめる
「入力してよい情報・してはいけない情報(利用者の個人情報は入力しない)」「AIの答えは人が確認してから使う」「業務では団体のアカウントを使う」——この3点だけでも文書にして共有すれば、安全度は大きく変わります。
このガイドは2026年7月時点のOpenAI・Anthropic・Microsoft・Googleの公式情報にもとづいています。各プランの価格・内容は変更されることがあるため、申請前に公式ページで最新の条件をご確認ください。
関連リンク
各サービスの割引内容と申請先は個別ページに、ChatGPT・Claudeの申請に使うGoodstack認証は登録ガイドにまとめています。